
相続手続きを進める際、銀行や証券会社、不動産の名義変更などで「戸籍謄本を一式提出してください」と言われることがあります。
このときに役立つ書類の一つが、法定相続情報一覧図です。
法定相続情報一覧図を取得しておくと、被相続人と相続人の関係をA4用紙1枚で証明できるため、戸籍謄本の束を何度も提出する手間を減らせる場合があります。
ただし、法定相続情報一覧図は、すべての相続で必ず必要な書類ではありません。
相続手続きの内容によっては、作成した方がよい場合もあれば、戸籍一式を提出するだけで足りる場合もあります。
また、法定相続情報一覧図を作ったからといって、相続手続きがすべて完了するわけでもありません。
この記事では、法定相続情報一覧図の基本、必要書類、取得方法、自分で作成する場合の注意点に加えて、「自分の場合は作った方がよいのか」「作らなくてもよいのか」という判断の目安を司法書士が解説します。
法定相続情報一覧図とは
法定相続情報一覧図とは、亡くなった方と相続人の関係を一覧にした書類です。
家系図のような形で、被相続人、配偶者、子、父母、兄弟姉妹などの関係をA4用紙1枚にまとめます。
この一覧図を戸籍謄本などの必要書類と一緒に法務局へ提出し、登記官の確認を受けることで、認証文付きの「法定相続情報一覧図の写し」が交付されます。
この認証文付きの一覧図は、相続関係を証明する書類として、預貯金の解約、不動産の相続登記、証券口座の名義変更など、さまざまな相続手続きで利用できる場合があります。
簡単に言えば、法定相続情報一覧図は、戸籍謄本の束の代わりとして使えることがある、相続関係を証明するための公的な書類です。
ただし、注意点があります。
法定相続情報一覧図で分かるのは、あくまで「誰が法定相続人なのか」という相続関係です。
遺産を誰がどのように相続するのか、遺産分割協議がまとまっているのか、相続放棄をした人がいるのか、といった内容まで証明するものではありません。
そのため、相続手続きの内容によっては、法定相続情報一覧図とは別に、遺産分割協議書、印鑑証明書、登記申請書などが必要になります。
先に結論|法定相続情報一覧図を作った方がよい人・作らなくてもよい人
法定相続情報一覧図は便利な制度ですが、どの相続でも必ず必要になるわけではありません。
手続き先の数や相続関係によって、作成した方がよい場合と、作らなくてもよい場合があります。
法定相続情報一覧図を作った方がよい人
次のような場合は、法定相続情報一覧図を作成するメリットがあります。
- 銀行、証券会社、不動産など、相続手続き先が複数ある
- 複数の相続手続きを同時に進めたい
- 相続人が多く、必要な戸籍の枚数も多い
- 不動産はないが、自分を含む相続人の範囲を確認したい
法定相続情報一覧図の写しは複数枚取得できるため、戸籍一式の返却を待たずに、複数の手続きを進めやすくなります。
また、相続人が多い場合や、兄弟姉妹・甥姪が関係する場合は、相続関係を一覧で整理できる点もメリットです。
法定相続情報一覧図を作らなくてもよい可能性が高い人
一方で、次のような場合は、必ずしも作成する必要はありません。
- 相続手続き先が1〜2か所程度
- 戸籍一式を提出し、返却後に次の手続きを進めれば足りる
- 相続人が配偶者と子だけで、相続関係が単純
- 不動産の相続登記を司法書士にまとめて依頼する予定
- 作成にかかる手間や専門家報酬に対して、メリットが小さい
法務局での交付手数料は無料ですが、戸籍や住民票の取得費用はかかります。また、自分で作成する場合は、戸籍を集めて相続人を確認する手間も必要です。
手続き先が少ない場合は、戸籍一式をそのまま利用した方が簡単なこともあります。
司法書士に相談した方がよい人
次のような場合は、自分で進める前に司法書士へ相談することをおすすめします。
- 兄弟姉妹や甥・姪が相続人になる
- 代襲相続や数次相続が発生している
- 疎遠な親族がいる、または相続人が分からない
- 戸籍の収集や読み取りが難しい
- 不動産の相続登記も必要になる
法定相続情報一覧図の作成で難しいのは、図を書くことよりも、戸籍を集めて相続人を正確に確定することです。
相続関係が複雑な場合は、最初から司法書士に相談した方が、手続きのやり直しを防ぎ、結果的に時間や負担を減らせます。
法定相続情報一覧図でできること・メリット
法定相続情報一覧図は、主に次のような相続手続きで利用できます。
- 預貯金の解約・名義変更
- 不動産の相続登記
- 株式・投資信託など有価証券の名義変更
- 自動車の名義変更
- 相続税申告
- 年金関係の手続き
法定相続情報一覧図を利用すると、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本などを、手続き先ごとに何度も提出する負担を減らせます。
写しは必要な枚数を無料で取得できるため、銀行や証券会社、不動産の相続登記など、複数の手続きを同時に進めたい場合にも便利です。
また、一覧図を作成する過程で戸籍を確認するため、誰が法定相続人になるのかを整理できます。特に、兄弟姉妹や甥・姪が相続人になる場合など、戸籍の枚数が多い相続で役立ちます。
ただし、どの金融機関や手続き先でも利用できるとは限りません。事前に、提出先へ確認しておくと安心です。
法定相続情報一覧図の注意点
法定相続情報一覧図は便利ですが、誤解されやすい点もあります。
特に次の点には注意が必要です。
一覧図を作れば相続手続きがすべて終わるわけではない
法定相続情報一覧図は、相続関係を証明する書類です。
誰が法定相続人なのかを示すことはできますが、誰がどの財産を相続するのかまでは証明できません。
そのため、遺産分割協議が必要な場合には、別途、遺産分割協議書が必要になります。
不動産の相続登記をする場合には、登記申請書、固定資産評価証明書、登録免許税、委任状など、別の書類や手続きも必要になります。
銀行手続きでも、金融機関所定の相続届や印鑑証明書などを求められることがあります。
法定相続情報一覧図は便利な書類ですが、相続手続きをすべて代替するものではありません。
一覧図を作成済みでも、司法書士費用が大きく安くなるとは限らない
法定相続情報一覧図があると、相続人関係の確認がしやすくなります。
ただし、相続登記には、不動産の確認、遺産分割協議書や登記申請書の作成、登録免許税の計算など、一覧図とは別の作業も必要です。
そのため、一覧図を自分で作成していても、司法書士の報酬が大きく安くなるとは限りません。実際の費用は、依頼する内容や司法書士事務所の料金体系によって異なります。
金融機関で便利だが、必須とは限らない
法定相続情報一覧図は、銀行や証券会社の手続きで便利なことがあります。
ただし、必ず作らなければならないわけではありません。
手続き先が少ない場合や、戸籍一式を提出して返却してもらえば足りる場合には、一覧図を作らずに進められることもあります。
金融機関から法定相続情報一覧図の提出を案内されることもありますが、「戸籍一式では手続きできないのか」を確認すると、戸籍で対応できる場合もあります。
作成に手間や費用をかける前に、自分の場合に本当に必要かを確認しましょう。
法定相続情報一覧図の必要書類
法定相続情報一覧図を取得するには、主に次の書類が必要です。
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 被相続人の戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍 | 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍 |
| 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票 | 被相続人の最後の住所を確認する書類 |
| 相続人全員の戸籍謄本または戸籍抄本 | 相続人であることを確認する書類 |
| 申出人の本人確認書類 | 運転免許証、マイナンバーカード表面のコピー、住民票など |
| 法定相続情報一覧図 | 申出人または代理人が作成する一覧図 |
| 申出書 | 法務局へ提出する申出書 |
| 相続人の住民票 | 一覧図に相続人の住所を記載する場合に必要 |
| 委任状 | 司法書士など代理人に依頼する場合に必要 |
事案によっては、上記以外の書類が必要になることもあります。
特に、代襲相続、数次相続、兄弟姉妹相続などでは、必要な戸籍が増える傾向があります。
戸籍はどこまで集める必要があるか
法定相続情報一覧図の申出では、原則として、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍が必要です。
戸籍は、結婚、転籍、法改正による改製などによって何度も作り替えられていることがあります。そのため、最後の戸籍だけを取得すれば足りるわけではありません。
被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍を順番につなげて確認し、相続人を確定する必要があります。
また、相続人については、被相続人が亡くなった後に取得した戸籍謄本または戸籍抄本が必要です。
被相続人の死亡時点における相続関係を確認するため、死亡後に交付された戸籍を用意します。
2024年3月1日からは、戸籍証明書等の広域交付制度が始まり、本籍地以外の市区町村窓口でも戸籍証明書・除籍証明書を請求できるようになりました。
これにより、本籍地が遠方にある場合でも、以前より戸籍を集めやすくなっています。
ただし、広域交付ですべての戸籍が取得できるわけではありません。
一部の戸籍は対象外となる場合がありますし、代理人による請求では利用できない場面もあります。
戸籍の収集でつまずいた場合は、無理に進めず、専門家へ相談することをおすすめします。
法定相続情報一覧図の取得方法・流れ
法定相続情報一覧図を取得する流れは、大きく分けると次の5ステップです。
1. 戸籍などの必要書類を集める
まず、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍、被相続人の住民票の除票または戸籍の附票、相続人全員の戸籍謄本などを集めます。
相続人の住所を一覧図に記載する場合は、相続人の住民票も必要になります。
2. 戸籍を確認して相続人を確定する
集めた戸籍を確認し、誰が法定相続人になるのかを確定します。
法定相続情報一覧図の作成で大切なのは、図をきれいに作ることよりも、戸籍を正確に読み取り、相続人を漏れなく確認することです。
3. 法定相続情報一覧図と申出書を作成する
相続人を確認できたら、被相続人と相続人の関係を一覧図にまとめます。
法務局のホームページには、相続関係ごとの様式や記載例がありますので、自分で作成する場合はそれを参考にするとよいでしょう。
あわせて、法務局へ提出する申出書も作成します。
4. 管轄の法務局へ提出する
必要書類、法定相続情報一覧図、申出書をそろえて、管轄の法務局へ提出します。
法定相続情報一覧図は、どこの法務局でも自由に申出できるわけではありません。
申出ができるのは、次のいずれかを管轄する法務局です。
- 被相続人の死亡時の本籍地
- 被相続人の最後の住所地
- 申出人の住所地
- 被相続人名義の不動産の所在地
複数の法務局が候補になる場合は、行きやすい法務局や、郵送対応しやすい法務局を選ぶことになります。
不動産の相続登記も予定している場合は、不動産所在地を管轄する法務局との関係も確認しておくとよいでしょう。
5. 認証文付きの法定相続情報一覧図の写しを受け取る
法務局で内容確認が完了すると、認証文付きの法定相続情報一覧図の写しが交付されます。
交付された一覧図は、預貯金の解約、不動産の相続登記、証券口座の名義変更など、相続手続きで戸籍一式の代わりとして使える場合があります。
法定相続情報一覧図の書き方
法定相続情報一覧図は、法務局が公開している様式や記載例を参考に、A4縦の用紙で作成します。
相続人の住所は任意ですが、記載しておくと、手続きによっては住民票の提出を省略できる場合があります。住所を記載する場合は、相続人の住民票なども必要です。
また、相続税申告に利用する場合は、続柄の書き方に注意が必要です。養子がいる場合は、「子」ではなく「養子」など、実子との区別が分かるように記載します。
手書きでも作成できますが、読みやすさを考えると、法務局の様式を使ってパソコンで作成する方が無難です。
法定相続情報一覧図の費用・有効期限・再交付
法定相続情報一覧図の写しは、必要な枚数を法務局で無料で取得できます。
ただし、戸籍謄本や住民票の取得費用、郵送費、司法書士へ依頼する場合の報酬は別途必要です。
法定相続情報一覧図そのものに法律上の有効期限はありませんが、金融機関などが独自に期限を設けている場合があります。使用前に提出先へ確認しておくと安心です。
一覧図は申出日の翌年から5年間、法務局で保管されます。その間は、原則として当初の申出人が再交付を請求できます。
法定相続情報一覧図を利用する際の注意点
法定相続情報一覧図は便利な制度ですが、次のような場合は注意が必要です。
- 提出先が法定相続情報一覧図に対応していない
- 被相続人や相続人が日本国籍を有せず、戸籍を提出できない
- 相続放棄をした人がいる
- 数次相続が発生している
- 遺産分割の内容を証明したい
金融機関などの提出先によっては、法定相続情報一覧図ではなく、戸籍一式を求められることがあります。
また、被相続人や相続人が日本国籍を有せず、相続関係を確認できる戸籍を提出できない場合は、この制度を利用できません。
相続放棄をした人がいる場合でも、一覧図には戸籍上の法定相続人として記載されます。相続放棄をしたことは一覧図だけでは証明できないため、別途、家庭裁判所の書類などが必要になる場合があります。
数次相続が発生している場合は、亡くなった方ごとに一覧図を作成する必要があるなど、手続きが複雑になることがあります。
なお、法定相続情報一覧図で証明できるのは、誰が法定相続人であるかという相続関係です。誰がどの財産を相続するのか、遺産分割協議が成立しているのかまでは証明できません。
相続登記と一緒に進める場合の注意点
不動産の相続登記が必要な場合、法定相続情報一覧図だけを先に作ればよいとは限りません。
相続登記では、法定相続情報一覧図のほかにも、登記原因証明情報、遺産分割協議書、印鑑証明書、固定資産評価証明書、委任状、登録免許税などが関係します。
また、相続登記を司法書士に依頼する予定がある場合、戸籍収集から一覧図作成、登記申請までまとめて相談した方が効率的なことがあります。
自分で一覧図だけを先に作っても、その後の登記手続きで別の書類が必要になったり、進め方を見直したりすることがあります。
特に、相続人が多い場合、遺産分割協議が必要な場合、不動産が複数ある場合は、一覧図単体ではなく、相続登記全体の流れで考えることをおすすめします。
なお、令和6年4月1日からは、不動産登記の申請において、登記申請書に法定相続情報番号を記載することで、法定相続情報一覧図の写しの原本添付を省略できるようになっています。
ただし、これは不動産登記の申請等で利用できる仕組みであり、金融機関など法務局以外の手続きで使えるものではありません。
不動産がない相続でも、法定相続情報一覧図が役立つことがあります
相続というと、不動産の名義変更をイメージされる方が多いかもしれません。
しかし、不動産がない相続でも、法定相続情報一覧図が役立つことがあります。
たとえば、次のようなケースです。
- 亡くなった方に不動産はないが、銀行口座や証券口座がある
- 相続人が誰なのか分からない
- 長年付き合いのない兄弟姉妹がいる
- 甥や姪が相続人になるかもしれない
- 親族関係が複雑で、誰に連絡すればよいか分からない
- 金融機関の手続き前に、相続人を整理したい
不動産がない相続では、「司法書士に何を相談できるのか分からない」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、法定相続情報一覧図の作成に必要な範囲で、戸籍の収集や相続人の確認を司法書士へ依頼できます。
特に、兄弟姉妹相続や甥・姪が関係する相続では、戸籍が多くなりやすく、相続人の確定だけでも大きな負担になることがあります。
不動産がないからといって、相続手続きが簡単とは限りません。
「誰が相続人なのか分からない」という段階でも、まずは相談することをおすすめします。
明星司法書士事務所でできること

兄弟姉妹や甥・姪が相続人になる場合、代襲相続・数次相続が発生している場合、疎遠な親族がいる場合は、戸籍収集や相続人の確定が複雑になりやすくなります。
明星司法書士事務所では、法定相続情報一覧図の作成だけでなく、戸籍収集、相続人調査、不動産の相続登記までまとめてご相談いただけます。
不動産がない相続でも、「誰が相続人なのか分からない」という段階から相談可能です。
練馬区周辺で相続手続き、法定相続情報一覧図、不動産の相続登記についてお困りの方は、お気軽にご相談ください。
よくある質問
法務局のホームページには、法定相続情報一覧図の様式や記載例が掲載されています。
ただし、戸籍を集めて相続人を正確に確定する必要があるため、相続関係が複雑な場合は注意が必要です。
兄弟姉妹相続、代襲相続、数次相続がある場合は、司法書士に相談した方が安全です。
複数枚取得しても無料です。
ただし、戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍、住民票などの取得費用は別途かかります。
郵送で請求する場合は郵送費も必要です。
司法書士などの専門家に依頼する場合は、別途報酬がかかります。
ただし、提出先の金融機関などが独自に有効期限を設けている場合があります。
実際に使用する前に、提出先へ確認しておくと安心です。
申出ができるのは、被相続人の死亡時の本籍地、被相続人の最後の住所地、申出人の住所地、被相続人名義の不動産の所在地のいずれかを管轄する法務局です。
法定相続情報一覧図があると、相続人関係の確認がしやすくなります。
ただし、相続登記には、不動産の内容確認、遺産分割協議書や登記申請書の作成、登録免許税の計算、法務局への申請など、一覧図とは別の作業も必要です。
そのため、一覧図を作成済みであっても、相続登記の費用が大きく安くなるとは限りません。具体的な費用は、依頼する司法書士事務所へ事前に確認されることをおすすめします。
不動産がない相続でも、法定相続情報一覧図の作成を通じて、相続人調査を進められる場合があります。
特に、兄弟姉妹相続、甥・姪が関係する相続、疎遠な親族がいる相続では、相続人の確定だけでも大きな負担になることがあります。
「誰が相続人なのか分からない」という段階でも、まずはご相談ください。
まとめ
法定相続情報一覧図は、被相続人と相続人の関係をA4用紙1枚にまとめ、法務局の認証を受けた書類です。
預貯金の解約、不動産の相続登記、証券口座の名義変更など、複数の相続手続きを進める際に役立ちます。
ただし、どの相続でも必ず必要になるわけではありません。手続き先が少ない場合や、戸籍一式の提出で足りる場合は、作らなくてもよいことがあります。
また、法定相続情報一覧図を作っても、遺産分割協議書や登記申請書など、別の書類や手続きが必要になる場合があります。
作成するか迷う場合や、兄弟姉妹相続・代襲相続・数次相続などで相続関係が複雑な場合は、早めに司法書士へ相談することをおすすめします。



