物知りさんにご用心

ほぼフィクションにしてますが、実際にあったことを元にしたお話です。

ある家族のお父様がお亡くなりになりました。借金は無く、立派な家を1軒遺して。

ご家族は、お母様と成人したお子様が3人。とても仲が良く良好な関係です。

相続人はこの4人。相続関係としてはシンプルなケースです。

遺されたご家族は、相続手続きなど経験がなく何から始めれば良いのやら…?という状態。

お子様たちも独立していて生活に問題は無く、家の権利はそこに一人で住むことになるお母様が取得することが良いと皆思っています。

ここで、お父様の生前から親交があり、物知りで頼りになる近所のおじさんが、困っているこの家族にアドバイスをしてくれました。

「お母さんに家の権利を全部渡したいなら、子どもたちは相続放棄をすればいい。裁判所で手続きしなさい」

お子様たちは、何の疑問も持たず最寄りの家庭裁判所で相続放棄の手続きをしました。

民法第939条には次のようにあります。

 

民法第939条
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす

 

このケースでは、お子様が3人とも相続放棄をしたので、アドバイス通りお母様だけが相続人になるのでしょうか?

いいえ、このケースではそうはなりません。

第1順位で相続人となる「子」が初めからいないとみなされ、相続権は次順位に移ります。

 

 

配偶者は必ず相続人になりますが、相続放棄をしたお子様たちの相続権は第2順位または第3順位の方々に移っていきます。

第2順位は、亡くなったお父様の両親又は祖父母など上の世代。

第2順位の方も亡くなっていれば、第3順位の兄弟姉妹へと相続権は移ります。

相続権が移ってしまっても、新たな相続人全員が良く知る間柄で、みんな揃って遺産分割協議ができるのであれば問題ありません。

ただ、相続権が第3順位の兄弟姉妹までいってしまうと、親戚付き合いがあまり無いことも多いですし、さらにその兄弟姉妹が亡くなると、その配偶者や子供たちまで相続人になり、一気に人数が増えて相続関係がみるみるややこしいことになっていきます。このケースは、結局お母様と、お父様の7人の兄弟姉妹が相続人となったのですが、両者にあまり親交が無く、連絡するのも一苦労で手続きが一向に進まず大変なこととなりました。

 

兄弟姉妹相続(第3順位)と遺言
お子様がいない場合、第2順位(親、祖父母)の方より先に亡くなることは少ないため、初めから第3順位の兄弟姉妹相続になることが想定されます。配偶者がいる場合は、このケースと同様に複雑な相続手続きになる可能性がありますのであらかじめ「遺言」を作成しておくことをお勧めします。
その他、遺言を作成した方が良いケースについては ⇒<遺言をした方がいいの?>

 

実際に、相続放棄を利用して相続関係をシンプルにすることはあります。

しかし、このケースではありえません。

このケースでは、最初からお母様と第1順位のお子様3人とで遺産分割協議をしていれば問題なかったのです。住所地の役所で印鑑証明書を取得するだけでよく、わざわざ家庭裁判所で手続きする必要もありませんでした。

相続は、全てがケースバイケースのオーダーメイドと考えた方が良いと思います。

この物知りおじさんも、この家族を想い、100%親切心でのアドバイスだと思います。

相続放棄で上手くいったケースを経験していたのかもしれません。

ただし、相続はケースバイケース、この世に同じ相続は無いのです。

このケースなら、専門家に聞けば、相続放棄をするべきかどうか1分で答えが出ます。

無料相談をしている役所や事務所が多数ありますので、相談だけでも専門家に直接会ってした方が良いと思います。

(私も、地元練馬区役所や石神井庁舎の無料区民相談の相談員を定期的にしております。)

たとえ親切心からだとしても、親戚、ご近所、インターネット上などにいる「物知りさん」のアドバイスにはご注意ください。

「物知りさん」の成功体験が、あなたにとっての「正解」とは限りません。

 

相続放棄
相続開始後、原則3か月以内に家庭裁判所で行う手続き。相続に関して初めからいなかったことになる。厳格な効力があり取り消しは難しい。相続財産が債務超過、借金が多額の場合に多く用いられ、亡くなった人の借金を引き継がなくてよくなる。ただし、プラスの財産ももらえない。
遺産分割協議
原則、法定相続人全員が参加する協議。全員一致すればいかようにも遺産の分配方法を決められる。協議が整えば裁判所等を利用する必要は無く、「遺産分割協議書」を作成し、全員が実印を押印することで相続手続きを進めることが出来る。
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司法書士 明星巌

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