過去分(過去の相続)も登記義務の対象になる
「相続登記の義務化等」に関する改正法は、令和6年(2024年)4月1日に施行されることが決まりました。
施行日以降に発生した相続は義務化の対象になることは当然として、施行日の前や、既に発生している相続についても、法改正後に義務化は適用されるのでしょうか?
結論から言うと、今回の法改正は施行日である令和6年(2024年)4月1日より前に発生した過去の相続についても、義務化が適用(遡及適用)されます。
なぜ、相続登記は義務化されるのか?
令和3年(2021年)4月21日に国会で成立した法律改正により、登記されている登記名義人が死亡して相続が発生した場合、原則として3年以内に相続登記を申請しなければならないという義務が相続人に課せられ、正当な理由なく違反すると過料が課されることとなりました。
これまでに相続登記の期限に関する義務はなく、今回の改正は国民にとって新たな負担となることが予想されます。
では、国民に新たな負担を強いてまで、相続登記はなぜ義務化されたのでしょうか?
最も大きな要因は、既に社会問題化している「所有者不明土地問題」です。
「所有者不明土地問題」とは?
所有者不明土地の定義は、
「不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない、または判明しても連絡がつかない土地」
とされています。
国の調査では、登記簿の約20%が所有者不明土地であることが判明しています。
そして、その原因として最も大きなものが「相続登記未了」です。登記名義人が死亡したまま、承継した相続人名義に相続登記をしていないため、現在の所有者が分からなくなっているのです。
相続人調査は、複雑な戸籍の収集や解読が必要なため、国や各自治体にとって非常に大きな負担となり、手つかずになっていることが多いのが現状です。
しかし、そのまま放っておくと所有者不明土地にはさまざまな問題点が発生します。
所有者不明土地の問題点として、最も身近なものは「空き家」問題です。
日本の法律で個人の財産は手厚く保護されているため、所有者が分からない土地の建物が荒れ果てて崩れかけても、国や自治体は簡単に解体撤去できず、近隣住民にとっての危険や、治安等の不安の大きな要因となっています。
また、地震や洪水、台風被害に伴う復旧作業の際も、所有者の許可がない土地に無断で侵入することができず、復旧作業のために利用することもできないため、所有者不明土地は復興等の大きな妨げになっているのが現状です。
このまま何の対策もせずに放置した場合、2040年の所有者不明土地は約720万ヘクタール(北海道全体の土地面積に相当)になるという予測もあります。
所有者不明土地は、放置することにより権利関係がより複雑化し、解消から遠のくことはあってもその逆はまずありません。時間が経てば経つほど解決は難しくなります。
この所有者不明土地問題の予防と解消を目的としたものが、今回の相続登記義務化です。
相続登記の義務化に関する罰則
では、どのような義務が課せられ、どのような罰則があるのでしょうか?
また、相続登記の義務化以外にも、所有者不明土地問題解決のための対策が同時に成立していますので、それについても見ていきましょう。
3年以内に登記しなければ10万円以下の過料
「相続により不動産の所有権を取得したものは、自己のために相続があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に所有権の移転の登記を申請しなければならない」とされました。
正当な理由なく、その申請を怠ったときには10万円以下の過料が課されます。
また、遺言で財産を譲り受けた場合も同様の義務があり、違反した場合は過料の対象となります。
施行日にいきなり罰則が適用されるの?
それでは、相続発生から既に3年以上経っている場合は、施行日にすぐ罰則の対象になってしまうのかというと、そうではありません。
法律の施行後、以下のいずれか遅い方のタイミングまでに手続きすれば大丈夫です。
- 相続開始を知ってから3年
- 相続登記義務化施行日(2024年4月1日)から3年
「相続開始を知ってから3年」というのは、思いがけず相続人になっていて、自身に相続登記の義務があることを知らなかった場合などです。知らない間に3年が経過した場合にも罰則を科すのは酷なので、このような規定になっています。
ですが、特殊な事例ですし、「相続開始を知った時期の証明」が必要になる可能性があります。
「相続登記義務化施行日から3年」は、そのままの意味です。法改正前に発生した相続は、3年以内の2027年4月1日までに手続きすれば問題ありません。
すぐにできない、期限に間に合わないときは?
相続登記は、亡くなった方の「出生から死亡までの連続した戸籍」など、必要書類がたくさんあります。また、遺産分割協議が難航して、手続きが進められないこともあります。
そういった理由で相続登記がすぐにできない、期限に間に合わない場合には相続人であることを登記官に対して申し出ることにより、1.の「知ってから3年以内に相続登記をしなくてはならない」義務は免れます。
その場合、登記官が登記簿に申告をした者の住所氏名などを記録する相続人申告登記(仮称)がなされる予定です。
「相続人である旨の申出」は戸籍謄本1通等の提出でできるので、すぐに登記ができないときや、期限に間に合わないときは、これを利用しましょう。
遺産分割後の登記義務
前述の場合で相続人申告後に遺産分割協議が成立し、不動産の所有権を取得したときは、不動産を取得した者に遺産分割の日から3年以内に登記しなければならない義務が発生します。
登記名義人の氏名または名称および住所の変更登記の義務
これも今までは義務ではありませんでしたが、所有者不明土地の原因の一つであるため、相続登記と同時に義務化されます。
登記名義人の氏名または名称(法人等の名称)および住所が変更になった場合、その変更があったときから2年以内に変更の登記をしなければなりません。
正当な理由なくその申請を怠ったときには、5万円以下の過料が課されます。
相続により取得した土地所有権の国庫への帰属(相続土地国庫帰属制度)
相続した土地を、国に帰属させる(あげる)ことができるようになります。
相続財産ではあるものの誰も欲しがらず、利用価値もない土地の場合、適切な登記がなされず、そのまま所有者不明土地になることが多く、このような場合に国にその土地をあげてしまおうという法律です。
このようなケースは多く、相続人は自治体等に寄付したいのですが、法的な根拠がなく、寄付後の管理費用負担や責任の所在など法的整備がなされていなかったので、積極的に寄付を受ける自治体は少ないのが現状でした。
今後は要件が明確化され、管理費用10年分を相続人側が負担すること等を条件に、国に帰属させることができるようになります。
過去の相続も、まずはお気軽にご相談ください!
まだ不透明な部分も多い改正法ですが、
- 相続開始から3年以内
- 氏名または名称および住所の変更から2年以内
という数字だけは意識しておいた方がいいでしょう。
相続登記は時間が経てば経つほど、二次相続の発生で相続人が増えたり、保存期間経過で必要書類が取得できなくなるなど、難易度が上がっていきます。
既に発生した相続があり、不動産の相続登記をまだ終えていない場合は、お気軽に明星司法書士事務所までご相談ください。
明星司法書士事務所に依頼することのメリット
登記申請の専門家である明星司法書士事務所にご依頼いただいた場合、ご自身で登記される場合と比べて次のメリットがあります。
当事者や必要な手続きについて整理することができます。
「誰が申請人になるのか?何が必要か?」などの状況を整理した後、ご自身で登記申請を頑張るか、ご依頼いただくかを無料相談後にご検討いただければと思います。
公的書類等を代行取得できます。
相続登記は戸籍や住民票をはじめ、非常に多くの書類の取得が必要です。
戸籍等は本籍地のある地方自治体に出向くか、郵送で取り寄せる必要がありますが、ご依頼いただければそれらも全て当方が代行取得します。
署名押印が必要な書類の作成も代行します。
登記申請には、さまざまな書類を添付する必要があります。戸籍や印鑑証明書などの公的書類以外の署名押印が必要な多くの書類は、自ら作成する必要があります。
例えば登記申請書、登記原因証明情報、遺産分割協議書等は、ご自身がパソコンなどで作成して印刷し、当事者が署名押印などして提出する必要があるのですが、それらについても全て司法書士が作成代行します。
法務局や役所に出向く必要がありません。
登記申請、不備があった場合の対応、完了後の新たな権利証の受け取り、登記後の登記簿の確認などを全て代理人として司法書士が行います。依頼人は、一切出向く必要がありません。
また、権利証(登記識別情報通知)の表紙などもきれいに装丁してお渡しします。
「相続手続きは最初に司法書士に相談すべき4つの理由」について、詳しくは▼こちらのページをご覧ください。
相続登記の費用
司法書士報酬(税込) | |
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登記報酬 | 59,800円 (遺産分割協議書作成含む) |
戸籍等 必要書類取得報酬 |
最大44,000円 |
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